「AI を使って開発しています」——最近、Web 制作会社や開発会社のサイトでこうした文言を見かける機会が増えました。ただ、発注する側からすると「具体的に何が変わるの?」「品質は大丈夫なの?」という疑問が先に立つのではないかと思います。私たちゼットリンカーでも、2025年の後半あたりから本格的に AI ツールを開発フローに組み込み始めました。この記事では、Next.js 16 と Claude Code を中心に、受託開発の現場で実際に何が起きているのかを、できるだけ正直にお伝えします。
Claude Code や Cursor とは何か?——非エンジニアの方へ
まず、この記事で何度か登場する「Claude Code」と「Cursor」について、技術者でない方にも分かるように説明させてください。
Claude Code は、Anthropic 社が提供している AI アシスタント「Claude」の開発者向けツールです。ターミナル(黒い画面)の中で動作し、エンジニアが自然言語で指示を出すと、コードの生成・修正・ファイル操作などを行ってくれます。イメージとしては「コードが書ける、とても優秀なアシスタントが隣の席に座っている」という感覚に近いかもしれません。
Cursor は、AI 機能が組み込まれたコードエディタ(プログラムを書くためのソフト)です。コードを書いている最中に AI が補完候補を出してくれたり、選択した部分を「こう直して」と指示すると書き換えてくれたりします。
どちらも「AI がプログラムを全自動で作ってくれるツール」ではありません。あくまで人間のエンジニアが判断し、AI がその指示に基づいて手を動かすという関係です。料理に例えるなら、AI は非常に手際のいい調理アシスタントであって、献立を考えるシェフではありません。
私たちの使い分け
正直に言うと、Claude Code と Cursor はかなり用途が重なる部分があります。ただ、私たちゼットリンカーでは概ね次のように使い分けています。
- Claude Code: 新しい機能をまとまった単位で作るとき、既存コードの大きなリファクタリング、テストコードの生成、プロジェクト全体を横断するような作業
- Cursor: 日常的なコーディング中の補完、小さな修正やバグフィックス、コードを読みながら素早く理解したいとき
具体的に何が速くなるのか?
「AI を使うと開発が速くなる」とよく言われますが、すべてが均一に速くなるわけではありません。速くなる部分と、あまり変わらない部分があります。
AI に任せやすい作業
- 定型的な CRUD 画面の生成。 管理画面の「一覧・詳細・作成・編集」といった画面は、構造がパターン化されています。
- 型定義とバリデーションの整合性を保つ作業。 TypeScript の型と Zod スキーマと Firestore のデータ構造を一致させる作業は、AI が得意です。
- テストコードの生成。 「この関数に対するテストケースを書いて」と指示すれば、かなり実用的なテストコードが出てきます。
- コンポーネントの初期実装。 shadcn/ui のコンポーネントを組み合わせた UI の初期実装も、AI が下書きを作り、人間がデザインと突き合わせて調整する流れが定着してきました。
人間が判断すべき部分
- 認証・認可の設計。 「誰がどの画面にアクセスできるか」は業務ルールそのものです。AI がコードを書くことはできますが、ルールの正しさを判断できるのは人間だけです。
- パフォーマンスのボトルネック判断。 AI は「こう書けば動く」コードは出せますが、「この画面ではこのアプローチが最適」という判断は人間が行う必要があります。
- エラーハンドリングの方針。 ネットワークエラーへの対処方針はビジネス要件そのものなので、AI が勝手に決めるべきものではありません。
要するに、「書く」作業は速くなりましたが、「考える」「決める」作業のウェイトは変わっていません。
発注側にとって何が変わるのか?
見積もりへの影響
正直に言うと、AI ツールの導入によって見積もり金額が大幅に下がるかというと、そう単純な話ではありません。コードを書く時間が短縮される分、一部の工程は確かに効率化されています。ただし、受託開発の見積もりにはヒアリング、要件定義、設計、テスト、レビュー、ドキュメント作成など、コーディング以外の工程が多く含まれています。
むしろ私たちが意識しているのは、同じ予算でできることの幅が広がるという方向です。
納期への影響
実装フェーズのスピードが上がることで、全体のスケジュールに多少の余裕が生まれることはあります。ただ、受託開発のスケジュールを左右する最大の要因は、多くの場合「お客様側の確認・意思決定にかかる時間」です。
私たちの実感としては、AI 導入によって手戻りが起きたときのリカバリーが速くなったというメリットのほうが大きいです。
品質への影響
AI が生成したコードをそのまま納品する、ということは絶対にしません。私たちのフローでは、AI が生成したコードは必ず人間のエンジニアがレビューします。
テストコードの生成が容易になったことで、テストカバレッジは以前より上がる傾向にあります。結果として品質の底上げにつながっていると感じています。
AI 駆動開発で変わらないもの
要件整理は人間の仕事
「AI を使っているなら、要件もざっくりで大丈夫ですか?」と聞かれることがたまにあります。答えは「いいえ」です。むしろ逆で、AI にコードを書かせるためには、従来以上に要件を明確にする必要があります。
AI は曖昧な指示に対して「それっぽい」ものを作ってしまう傾向があります。だからこそ、ヒアリングと要件定義の工程はこれまでと同じか、それ以上に丁寧に行うようにしています。
業務理解の深さが品質を決める
受託開発の品質は、結局のところ「お客様の業務をどれだけ理解しているか」で決まります。AI は業務知識を持っていません。私たちゼットリンカーでは、AI ツールの導入で空いた時間を、業務理解やコミュニケーションに振り向けるよう意識しています。
コードの責任は開発会社にある
AI が書いたコードであっても、それを採用してシステムに組み込む判断をしたのは人間です。納品物の品質に対する責任は、当然ながら私たち開発会社が負います。
まとめ
Claude Code や Cursor といった AI ツールは、受託開発の「手を動かす」部分を確実に効率化してくれます。ただし、それは「考える」工程——要件整理、業務理解、設計判断——の重要性が下がったことを意味しません。私たちゼットリンカーは、AI を道具として使いこなしながら、お客様の業務課題に向き合うことを開発の軸に据えています。AI 時代の受託開発で大切なのは、ツールの新しさではなく、それを扱うチームの誠実さと技術力です。
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