「勤怠管理はクラウドSaaSに入れているが、シフト作成だけはExcelと現場の紙の希望表のままになっている」——中小企業の総務・情シス担当者から、こうした相談をよく受けます。
打刻データはSaaSにあるのに、シフトの組み方・希望休の集約・急な欠員の調整は別の運用のまま、というケースは珍しくありません。この記事では、勤怠管理・シフト管理をSaaSではなくNext.jsフルスクラッチで内製する場合の判断基準・設計・費用感・導入手順を整理します。
先に、要点をまとめます。
- 勤怠SaaSが向くのは「打刻・集計を標準機能で完結させたい」企業。内製が向くのは「シフトの組み方が業種特有」「勤怠データを他の基幹システム(給与・案件管理・現場配置)と直結させたい」企業
- Next.js実装では、打刻ログ・勤務予定(シフト)・確定した実績を分離したテーブル設計にし、労働時間の客観的な記録という制度上の要件を満たす形でログを残すのが壊れにくい
- 当社の開発費用は1時間11,000円(税込)が基準です。ヒアリング後、ご依頼に応じて、要件定義・現状調査、相談内容のすり合わせ・仕様合意、開発・移行・公開準備、テスト・受入確認、不確実な作業へのバッファを当社で見積もり、概算をご案内します。お客様が開発工数を推測する必要はありません
ただし、内製の勤怠・シフト管理には後述する「打刻の客観性をどう担保するか」という運用上の注意点があります。この点は後半で詳しく説明します。
勤怠SaaSと内製、どちらを選ぶべき?
打刻・集計を標準機能で完結させたいならSaaS、シフトの組み方が業種特有または他システムとの連携が必要なら内製が向きます。
市場にはジョブカン勤怠管理・KING OF TIME・マネーフォワード クラウド勤怠をはじめ、多くのクラウド型勤怠管理サービスがあります。これらは「打刻・労働時間の集計・有給管理」という業務を電子化する点では優れており、導入の速さとコストの低さが最大の強みです。
一方で、勤怠SaaSは「打刻と集計」を主軸に設計されており、シフト作成機能は簡易的な場合が少なくありません。以下のようなケースでは、SaaSの標準機能では対応しきれず、内製を検討する価値があります。
- シフトの組み方が業種特有で複雑:時間帯ごとに必要な人数・資格・スキルの組み合わせが変わり、SaaSの汎用シフト機能では表現しきれない(飲食店のピーク帯配置、介護施設の資格者配置など)
- 他の基幹システムとリアルタイムに連携したい:確定したシフトと実績打刻の差分から給与計算システムへ自動連携する、案件管理システムの稼働予定と勤務シフトを突き合わせる、といった処理をワンストップで行いたい
- 希望休・シフト希望の集約から自動割り当てまでを一気通貫にしたい:現場からの希望収集、公平な割り当てロジック、確定後の通知までを1つの画面で完結させたい
- 社内の別システム(案件管理・現場配置・複数拠点の在籍情報)のデータをシフト画面に自動反映したい:管理者が手入力する情報を減らし、転記ミスを防ぎたい
御社の状況がこれらの複数に当てはまるなら、SaaSの設定を工夫して延命するより、フルスクラッチでの内製を前提に検討を始める時期です。特に「シフトの自動割り当て」は見落とされがちですが、シフト作成だけを電子化しても、希望収集や調整のやり取りが従来通りメールやチャットのままでは、管理者の作業時間はさほど短縮されません。
実際に私たちが相談を受けるケースでは、「勤怠は今のSaaSのままでよいので、シフト作成の部分だけを内製したい」という部分的な内製の相談も少なくありません。全部を作り直す必要はなく、既存の勤怠SaaSとAPIまたはCSV連携する形でシフト管理だけを内製する、という選択肢も十分に現実的です。
Next.jsでの実装は、どういうテーブル設計にするべき?
打刻ログ・勤務予定(シフト)・確定した労働時間実績を、それぞれ独立したテーブルとして分離するのが壊れにくい設計です。

勤怠・シフト管理のテーブル設計で最も事故が起きやすいのは、「予定」と「実績」を1つのテーブルに混ぜてしまうことです。シフトの予定時刻をそのまま実績として扱うと、急な早退・遅刻・シフト変更が発生した際に、どちらが正しい記録なのか判断できなくなります。
推奨される設計は次の3層です。
- 打刻ログテーブル:出勤・退勤・休憩の打刻イベントをそのまま時系列で記録する。後から修正せず、追記のみで運用する(修正が必要な場合は「修正申請」という別のレコードを追加し、元の打刻ログは残す)
- シフト予定テーブル:従業員ごとの勤務予定(日付・開始時刻・終了時刻・役割)を保持する。希望収集の結果や、管理者による確定後の内容がここに入る
- 労働時間実績テーブル:打刻ログから集計した実際の労働時間を、日次・月次で確定させたスナップショットとして保持する。給与計算や労務管理の参照元は、常にこのテーブルにする
この3層に分けておくと、「シフト通りに来なかった」「打刻を忘れて手動で申請した」といった例外処理を、それぞれ適切なテーブルへの追記として扱えます。1つのテーブルに全部を詰め込むと、例外が起きるたびに既存レコードの上書きが発生し、修正履歴が追えなくなります。
シフトの自動割り当てはどう設計するべき?
希望休・必要人数・資格条件をルールとして持たせ、AIまたはアルゴリズムが「たたき台」を提案し、最終確定は人が行う設計が現実的です。
シフトの自動割り当てを全自動化しようとすると、現場の細かい事情(特定の従業員同士の相性、突発的な体調不良への対応力など)をすべてルール化する必要があり、要件定義だけで長期化しがちです。現実的な進め方は、次の2段階に分けることです。
- たたき台の自動生成:希望休・必要人数・資格条件(例:有資格者が各時間帯に最低1名)をルールとして登録し、条件を満たす組み合わせをシステムが提案する
- 管理者による確認・調整・確定:提案されたたたき台を管理者が確認し、現場の事情を踏まえて手動調整したうえで確定する
この設計であれば、システムは「調整の叩き台を作る」役割に徹し、最終判断の責任は管理者に残ります。全自動でシフトを確定してしまう設計は、現場から「機械的すぎる」という反発を招きやすく、結局手動で組み直す運用に戻ってしまうケースが目立ちます。
既存の勤怠SaaSを残したまま、シフトだけ内製できる?
打刻・有給管理・給与連携は既存SaaSに残し、シフト作成部分だけを内製してCSVまたはAPIで突き合わせる「部分内製」が、移行リスクを抑えたい企業には現実的な選択肢です。
勤怠管理を丸ごと作り直すのは、打刻データの移行・有給残日数の引き継ぎ・給与計算ソフトとの連携仕様の作り直しなど、想定以上に手間とリスクが大きい作業です。一方で、シフト作成だけであれば、既存の勤怠SaaSとは独立したデータとして扱いやすく、段階的な内製に向いています。
部分内製で連携する場合、代表的なパターンは次の2つです。
- CSV連携(バッチ方式):内製したシフト管理システムで確定したシフトをCSVで出力し、勤怠SaaS側にインポートする。実装がシンプルで、勤怠SaaS側にAPIが無い場合でも実現できる。ただし、シフト変更のたびに手動でインポートし直す運用になりやすく、リアルタイム性は低い
- API連携(リアルタイム方式):勤怠SaaSがAPIを提供している場合、シフト確定と同時に打刻予定としてSaaS側へ自動反映する。運用の手間は減るが、SaaS側のAPI仕様変更に追従する保守コストが発生する
どちらを選ぶかは、シフト変更の頻度と、勤怠SaaS側のAPI提供状況によって決まります。シフト変更が週次程度で収まる業種であればCSV連携で十分な場合が多く、飲食店や小売店のように日次でシフトが変動する現場では、API連携によるリアルタイム反映の効果が大きくなります。
まずは既存の勤怠SaaSの契約プランでAPI連携が提供されているかを確認し、提供されていない場合はCSV連携から始めて、業務が回ることを確認してから本格的な内製範囲の拡大を検討する、という順序が手戻りの少ない進め方です。
打刻の客観性はどう担保するべきか?
厚生労働省のガイドラインに沿って、タイムカードやICカード等の客観的な記録方法を基本にし、自己申告に頼る場合は補足的な運用にとどめるのが安全です。
労働時間の管理は、単に社内の利便性の問題ではなく、労務管理上の要件でもあります。厚生労働省が定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、使用者が労働日ごとの始業・終業時刻を、現認するか客観的な方法で記録することを原則としています。タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録などが客観的な記録方法の代表例です。これらの記録は、賃金台帳とともに一定期間保存する義務があるため、システム上でも打刻ログを消さずに保持する設計が前提になります(保存期間や具体的な運用の詳細は、必ず最新の厚生労働省の公式情報や社会保険労務士に確認してください)。
Next.jsで実装する場合、打刻はブラウザからのボタン操作だけでなく、打刻時刻・IPアドレス・端末情報をあわせて記録しておくと、後から「本当にその時刻に打刻したか」を確認する材料になります。加えて、打刻の修正が必要になった場合は、元の打刻ログを直接書き換えるのではなく、「修正申請」として別レコードを追加し、承認履歴とともに残す設計にしておくと、客観的な記録という要件からも運用上の透明性からも安全です。
御社が今、勤怠管理をExcelや紙の出勤簿で運用している場合は、打刻の記録方法が客観性の要件を満たしているかどうかを、まず一度確認してみることをおすすめします。
導入にはどれくらいの期間と費用がかかる?
見積もりは対象業務と未確定事項を伺ったうえで個別にご案内します。
費用感は、対象範囲によって大きく変わります。目安として3パターンに分けて整理します。
| 規模 | 内容 | 期間目安 | 費用目安 |
|---|
| 最小構成 | 単一拠点・打刻とシフト予定の登録・手動でのシフト作成支援(自動割り当てなし) | 1.5〜2ヶ月 | 個別に見積もり |
| 標準構成 | 複数拠点対応・希望休収集とシフトのたたき台自動生成・既存勤怠SaaSまたは給与システムとのCSV連携 | 2.5〜4ヶ月 | 個別に見積もり |
| 拡張構成 | 資格・スキル条件を踏まえた高度な自動割り当て・複数拠点間の応援シフト調整・給与システムとのリアルタイム連携 | 4ヶ月〜 | 個別に見積もり |
見積もりは対象業務と未確定事項を伺ったうえで個別にご案内します。
費用を左右する最大の要因は、「シフト条件の複雑さ」と「他システムとの連携範囲」です。最初から全拠点・全条件・全システム連携を目指すと、要件定義だけで数ヶ月かかることもあります。まずは一部拠点、あるいは特定の職種に絞って最小構成で立ち上げ、効果を確認しながら対象を広げていくのが、投資対効果を見誤らない進め方です。
見積もりの内訳を考えるうえでは、「開発費用(初期の作り込み)」と「運用費用(作った後の維持)」を分けて捉えることも重要です。開発費用は上記の表の通りですが、運用費用には法改正への追従(労働基準法・社会保険関連の改定対応)や、シフト条件の追加・変更対応といった継続的な作業が含まれます。多くの見積もりで見落とされがちなのが、この「作った後、誰が法改正の情報を追い続けるのか」という運用体制の部分です。導入して終わりではなく、制度変更が起きた際にシステム側の対応が必要かどうかを確認できる体制を、事前に見込んでおくと後から想定外の費用が発生しにくくなります。
導入でよくある失敗と、その回避策は?
「シフトの自動割り当てを最初から全自動にしようとする」「打刻の修正履歴を残さない設計にする」の2つが典型的な失敗パターンです。
勤怠・シフト管理システムの導入でつまずきやすいポイントを整理します。
- 失敗パターン1:シフトの自動割り当てを最初から全自動にする:現場の細かい事情をルール化しきれず、結局手動で組み直すことになり、システムが使われなくなります。回避策は、前述の通り「たたき台の自動生成+人による最終確認」の2段階設計にとどめ、自動化の精度が現場で信頼されてから範囲を広げることです
- 失敗パターン2:打刻ログを直接上書きする設計にする:修正のたびに元の打刻データが消えると、労働時間の客観的な記録という要件を満たせなくなるうえ、トラブル時に経緯を追跡できません。回避策は、修正申請を別レコードとして追加し、元の打刻ログと承認履歴の両方を残すことです
- 失敗パターン3:法改正への対応を後回しにする:労働基準法や社会保険関連の制度は改定が続くため、集計ロジックをハードコーディングしていると、改定のたびにコードの修正が必要になります。回避策は、割増率や控除額などの制度に紐づく数値を設定値として分離し、改定時にコード全体を触らず済む設計にしておくことです
- 失敗パターン4:現場での打刻が定着しない:どれだけ精緻なシフト管理を組んでも、打刻自体が徹底されなければ実績データが正しく積み上がりません。回避策は、打刻画面を現場の動線に合わせて最小限の操作で完結するよう作り込み、打刻の手間を後回しにしないことです
これらの失敗は、いずれも「最初から完璧を目指す」ことに起因しています。範囲を絞って小さく始め、実績を見ながら広げるという進め方が、結果的に投資を無駄にしない一番の近道です。
まとめ:この記事で持ち帰れること
ここまでの内容で、次の2点を判断できるようになったはずです。
- 自社の勤怠SaaSとシフト管理の運用が「内製を検討すべき段階」にあるかどうかの見極め方
- 打刻の客観性を担保しながら、シフトの自動割り当てをどこまでシステムに任せるべきかの設計方針
まずは今日、現在のシフト作成にかかっている時間を、直近1ヶ月分だけでよいので振り返ってみてください。希望収集・調整・確定のどの工程に一番時間がかかっているかを見るだけでも、内製で解決すべき範囲のイメージがつかめます。
私たちは、Next.js × Firebase構成での業務システム開発を、中小企業の実際の業務フローに合わせて内製する形でお手伝いしています。勤怠・シフト管理に限らず、「この業務のここだけシステム化したい」という部分的な相談も歓迎します。15分のカジュアルな相談も受け付けていますので、要件が固まっていない段階でもお気軽にご相談ください。
なお、シフト管理と合わせて検討されることが多い在庫・案件管理の内製については、在庫管理をAIで内製するや、承認フローとの連携については稟議・承認フローをNext.jsで内製するでも扱っています。複数拠点のデータを1画面で見たい場合は、散らばった社内データを1枚のダッシュボードに集約する設計もあわせてご覧ください。
技術仕様・対象バージョンは本文と参照先をご確認ください。
最終更新:2026年9月8日